個人の幸せと企業や国の成長は両立するのか【後編】
慶応義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科 前野隆司教授


今回は、幸福学研究の第一人者である慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科の前野隆司教授とのインタビュー後編をお届けします。

不幸な人は部分を見る、幸せな人は全体を見る

−日本人は海外と比べて、相対的な自分を評価し、その結果自分が幸せなのかを決める傾向があるように思います。

 学術的な心理学研究では、日本人が他の国に比べて、より相対的に幸せを決めるという明確な差はなかなか出ません。つまり、一般の方がいうほどには、国家間、文化間の差は確認しにくいというのが現状です。しかし確かに「もっと財産があればいいのにと思う」というアンケートでは先進国の中で日本がダントツに高かったという民間調査結果はありますね。また、相対的に比較をする人は幸福度が低いという学術研究結果もあります。日本でも米国でも、自分を他人と比べてしまいがちな人は幸福度が低い。他人と比べない人は幸せ。だから比べないほうがいいんです。

「もっと多くの財産があればもっと幸せだろう」と思う人(非常にそう思う、ややそう思う、と回答した人の合計)の割合(%)
(調査会社カンター・ジャパンが16歳以上の男女を対象として財産の所有と幸福感に関し、2010年に21ヵ国で行った調査による)

 

 人に勝って嬉しいという気持ちは長続きしない幸せです。一方で、感謝をしていると他人と比べて勝ちたいという気持ちや物欲が減るので、たくさん感謝をしようというやり方は有効であることが知られています。しかし比べることが癖になっていて、それをやめるべきだと言ってもなかなかやめられない人も少なくありません。そういう人は勝ってみるのがいいと思います。勝ち負けが気になる人は、大いにがむしゃらに頑張って、勝つまでやってみるのがいいのではないでしょうか。金持ちになりたい人は金持ちになってみればいいんです。そうすると、それでは長続きする幸せが得られないことが分かります。